ある日の事でございます。
事務所のふちを、独りでブラブラ歩いておりました。
花壇に咲いている二輪のバラからは、なんとも云えない好い匂いが
絶え間なくあたりへ溢れております。
時間は丁度朝なのでしょう。
この朝、軽トラックの傍を通りますと、木片を抱えた小さな生き物が一匹、
荷台を這って行くのが見えました。
早速手を挙げて追い払おうと致しましたが、「いやいや、これも小さいながら命の仕事を
しているに違いない。その仕事を無暗にとると云う事はいくら何でも可哀そうだ」
と、こう急に思い返して、とうとうその生き物を追い払わずに助けてやったのでございます。
しかし、花壇のバラは、少しもそんな事には頓着致しません。
花弁からは、何とも云えない好い匂いが、絶え間なくあたりへ溢れて居ります。
時間ももう午に近くなったのでございましょう。